正確な見積もりと迅速な図面提出を同時に実現

製造業において、見積もり作成と図面提出は受注獲得の成否を左右する重要なプロセスです。
しかし、多くの企業がこれらの業務で課題を抱えています。本記事では、CPQシステムを活用した効率的な解決方法をご紹介します。

1. 製造業における見積もりと図面作成の課題

見積もり作成時の一般的な問題点

製造業、特に個別受注生産型のメーカーでは、製品の仕様やオプションの組み合わせが膨大になります。
例えば、基本となる製品に対して10種類のオプションがあり、それぞれに3つの選択肢がある場合、
理論上は3の10乗(約6万通り)の組み合わせが発生します。


このような状況下では、以下のような問題が日常的に発生しています
– 仕様の組み合わせごとの価格算出に時間がかかる
– 技術的な制約条件の確認のために設計部門への問い合わせが必要
– 見積もり作成がベテラン社員の経験と勘に依存し属人化している
– 担当者による見積もり精度にばらつきがある
– 見積もり作成の遅れが商談機会の損失につながっている

図面提出における時間的ロス

見積書に添付する図面の作成プロセスでも、多くの時間的ロスが発生しています
以下のような問題も図面提出に関わる皆様から日常的に聞く話題です
– 仕様確認のための営業部門と設計部門の何往復ものコミュニケーション
– 標準的な図面であっても、CADでの作図に時間を要する
– 顧客からの修正依頼への対応で遅延が発生
– 設計部門の本来業務(新製品開発など)へ支障をきたしている

属人化による品質と所要時間のばらつき

多くの企業で、見積もりと図面作成の品質や作成時間は担当者の経験や技術力に大きく依存しています
– 若手営業担当者は製品知識が不十分で、見積もり作成に時間がかかり精度も低い
– 設計担当者の技術レベルにより図面品質に差が生じ、作成時間も大きく異なる
– 主要担当者の不在時は対応が遅れ、業務が停滞する
– 人的ミスによる手戻りが発生し、工数が増加して納期にも影響

2. CPQシステム導入による見積作成・図面作成の効率化

CPQシステムとは何か

CPQとは、Configure(仕様決定)、Price(価格設定)、Quote(見積作成)を迅速かつ正確に行うソリューションです。

CPQを活用することで、顧客の要求に応じた製品、仕様、オプションを適切に選定し、選択された製品仕様の製造可能性を確保することができます。
全社的に統制の取れた正確な見積もりを実現することが可能です。

  • 顧客要求に応じた絞込み
  • 選択肢の適否排他
  • 標準仕様のデフォルト設定
  • 推奨仕様への誘導
  • 必須オプションの自動設定

図面・3Dモデル作成の自動化の仕組み

CPQシステムは、CADなどの他システムとの連携により、選択された仕様に基づいた必要な図面や3Dデータを生成することが可能です。

– 基本仕様に応じた3Dモデルと外形図の自動生成
– オプション選択を反映した各種図面の作成
– プレゼンテーション用の3Dビュー画像の出力
– 詳細図面や寸法データの自動出力

CPQとCADを連携することで、見積回答時間の大幅な短縮や、手戻りの削減による生産性向上など、
営業から製造までのプロセスにおける大幅な改善が期待できます。

3. CPQシステムによる具体的な改善例

旭製作所様での導入効果

国内シェア1位、世界シェア2位を誇る理化学機器メーカーの旭製作所様では、CPQシステム導入により、以下のような改善を実現しました。

導入前の課題

– 価格情報や図面が社内の様々な部署に分散
– 見積回答に1日以上を要する 
– 設計部門が中小型製品の図面作成に時間を取られ、大型特注案件への対応が困難 
– 顧客対応の遅れによる失注リスク

導入後の改善効果

CPQシステムの導入により、以下のような劇的な改善を実現しました:

  1. 見積回答時間の短縮
    • 導入前:1日 → 導入後:30分
    • お客様自身によるWeb上での見積取得が可能に
  2. 図面作成の効率化
    • 3Dイメージ図面のその場での提示
    • 外形寸法図の自動生成
    • 打ち合わせ時での図面提出が可能
  3. 全社的な業務改善
    • 営業:価格確認の即時化
    • 設計:本来の開発業務への注力が可能に
    • 製造:図面確認作業の効率化
    • 受注につながるケースの増加

 

4. デジタル時代における製造業の競争力強化に向けて

製造業における見積作成と図面作成の自動化は、単なる業務効率化にとどまらない、ビジネスモデルの変革をもたらします。
導入企業様での実績から、その効果は以下の3つの観点から評価できます。

営業シーンでの改革

営業現場では、見積システムの導入により、従来のベテラン依存から脱却し、標準化された高品質な見積作成および顧客対応が可能になります。
特にWebシステムとの連携により、顧客自身による仕様選定や見積取得も実現。営業担当者は提案活動や複雑案件対応に注力でき、
新任・経験の浅い営業担当者も早期に戦力化できます。

設計部門の業務改革

設計者は定型的な図面作成業務から解放され、新製品開発や技術開発など、本来注力すべき業務に時間を割くことが可能になります。
また、顧客自身がシステムから必要な図面を入手できたり、営業からの問い合わせ対応が減少したりすることで、問い合わせ対応が減少し、
業務効率と設計品質の向上につながります。

経営面でのイノベーション

製造業において、見積回答のスピードと精度は受注獲得の重要な要素です。見積システムの導入により、営業機会損失を防ぐことで売上が向上し、
業務効率化による利益率の改善が実現します。さらに、市場変化への迅速な対応が可能となり、顧客満足度の向上にもつながります。
また、過去の見積・受注データを分析することで、製品別の利益率傾向や顧客ニーズの変化を把握でき、新製品開発や価格戦略の最適化といった経営判断に活用できます。

製造業のデジタル化が進む中、見積作成と図面作成の自動化は、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。
CPQシステムの導入は、単なる業務効率化ツールの導入ではなく、製造業のビジネスモデル変革を支える戦略的な取り組みと位置づけられます。

見積システムと図面自動作成の組み合わせは、営業力強化、技術力向上、経営革新という3つの側面から、製造業の競争力強化に貢献します。
今後、製造業のデジタルトランスフォーメーションが加速する中、このような業務改革の取り組みがますます重要になっていくでしょう。